乗らなくても劣化?自転車の寿命・経年劣化について思うこと
ミニベロ・ロードバイク・クロスバイクなど、私たちが趣味で乗る自転車。走行距離や年月を重ねるごとに、車体の各部で傷み・劣化が進行しています。
長年大切に乗られている自転車ほど、フレームやパーツの傷みは積み重なるので、経年劣化による故障が生じる可能性は増えていきます。
メンテナンス(組付け直しや部品交換)によって、傷みを回復できる部分もありますが、回復できない部分もあります。
そして、最終的に自転車のどこかが回復不能に陥った時、私たちはそれを自転車の「寿命」と考えるのでしょう。
先日、そんな「自転車の寿命や経年劣化」について改めて考える機会があったので、そのことについて雑記的に書き残しておきたいと思います。(写真少なめの読み物です)
興味があるかたは続きをご覧ください。
無暗に不安を煽る意図はありません。知識として頭に入れておいて、注意するに越したことはないというお話です。
きっかけは、和田サイクルさんによる注意喚起の情報
『和田サイクル』は東京の杉並区にある自転車屋さん。
100年以上の歴史がある老舗・超有名店で、私は「和田サイクル」さんが発信する情報をよく参考にしています。
注意喚起の記事が再掲
先日、私は『和田サイクル』さんのブログにあった「自転車の経年劣化・故障に関する記事」を読みました。
過去にもほぼ同じ内容が掲載されていたようですが(見たような気がする)、重要な内容であるために、改めて編集・再掲された記事でした。
当該記事では、車種「BD-1」を指名して注意喚起されていますが、基本的な内容は車種に関わらず「自転車の経年劣化」について理解を深めるのに役立つものです。
SNSでシェア、皆が語り合った
私は「この記事は、多くの自転車乗りが知っておいて損はない、有用な情報だなぁ」と思ったので、TwitterやFacebookでシェアしました。
私がSNSでシェアすると、
- それを見たフォロワーさんが記事をさらにシェアしたり、
- 記事を見た人が「自転車の寿命・経年劣化」について自身の考えを語るなど、
「和田サイクル」さんによる注意喚起の記事をきっかけに、多くの人が自転車の寿命・経年劣化について考え・語ることが数日間続いたようです。
興味深いポイント
この「和田サイクル」さんによる注意喚起の記事の中で、私が特に興味深いと思った内容は次の2点です。
- 「アルミフレームは約4年を過ぎると経年劣化による故障が増える」という話。
- したがって、10年とか20年経っているアルミフレームの自転車は、とっくに耐用年数を過ぎている。
- 「たとえ全く使っていない場合でも経年劣化は進行する」という話。
- フレームや各部品は、装着されていることによって常時、圧着・反発・伸長などの負荷がかかっている。全く乗らなくてもそのストレスが蓄積されている。
- 錆びないと言われるアルミでもじつは酸化・腐食する。ストレスがかかる部分に酸化が加わると強度低下や亀裂の原因になるそう。
◎詳しい内容は、「和田サイクル」さんブログの当該ページをご覧ください。
多くの人は、このようなことを普段意識していないので、すっかり忘れてしまいますが、基本的にはすべて事実。
「自転車にも賞味期限があって、賞味期限切れの自転車は、普通に使えることもあるけど、壊れる危険性もある」ということを、私たちは認識しておく必要があります。
フレーム素材による違いはあれど、みんな経年劣化する
新しく購入する自転車を選ぶ時、私たちは「フレームの素材」が何であるかにも注目します。
フレームの素材が違えば、その軽さ、振動吸収性、乗り味などが変わるという知識や実体験があるからです。そして耐久性にも違いがあります。
以下、フレーム素材による違いを大雑把にまとめました。(主要な3素材:クロモリ・アルミ・カーボンのみ記述)
クロモリフレーム
- 見た目:通常、細身で美しい。クラシカルな雰囲気。折りたたみ自転車などの場合は、強度を出すために極太に作られることもある。
- 乗り味:弾性があり、しなやか。乗り心地が良いものが多い。よくできたクロモリフレームは、自重やバネ感によって「自転車が自分で進んでいくような感覚」が得られることがあり、平地を長時間のんびり走るような時に快適に感じられる。
- 重量:やや重め。素材の比重は重いが、肉薄にできるので軽量なクロモリフレームもある。
- 耐久性:弾性が高い分、クラックや破断は比較的起きにくい。30年以上前のフレームが現役という例もある。ただ、手入れが悪いと錆びる。クロモリでも破断例はある。万が一、破断などが起きた時、溶接で修理してしまう人もいる。
アルミフレーム
- 見た目:従来、クロモリよりも太めだが、細身なアルミフレームも増えている。逆に、カーボンフレームみたいな太い形状に成型されることもある。
- 乗り味:通常、振動吸収性が悪く・硬めだが、ソフトな乗り味を実現するフレームもある。(アルミフレーム+カーボンフォークという車種も多い)。硬い分、トルクの伝達性が良く、パワフルな走りに向く。
- 重量:素材の比重は軽いが、クロモリよりも太めに作られるので、特別に超軽量というわけでもない。パーツをカーボンにしたり、肉厚を部分的に薄くするバテッドチューブによって軽量化されることが多い。
- 耐久性:4~5年でヘタりを感じる人が多いみたい。弾性が低いためストレスが蓄積されていき、劣化するとクラックや破断が起きることがある(発生事例は少なくない)。また、破断までいかなくとも、乗り味の悪化によって耐用期間が過ぎていることを実感することがある。
カーボンフレーム
- 見た目:やや太め、エアロ形状の車種も多い。カーボンフレームのロードバイクなどは、どれもよく似た形状になっているが、それは競技規定による部分が多い。
- 乗り味:振動吸収性が高く、しなりを感じることもあるが、クロモリのそれとはまた違うもの。ジオメトリやカーボン繊維の編み方によって、乗り心地や剛性感は大きく変わる。
- 重量:素材の比重は最軽量。しかし、自転車の重量はフレームだけではないので、組み上げた完成車の総重量はアルミフレームの車体と大差がないことも多い。(アルミフレームの自転車もパーツはカーボンだらけだったりするし…)
- 耐久性:落車などによるダメージがない限り5~10年程度はもつと言われているが、実際には未知数。メーカーサイドの人も「何年くらいもつ」とは言えない(不明)らしい。長年カーボンバイクに乗っている人によると、「数年でヘタリを感じる、以前より進まない」という話も。カーボンもまた、破断までいかなくても、劣化は進むということ。
◎フレーム素材による性質の違いはそれぞれありますが、「フレームの素材が何であっても、自転車はみんな経年劣化する」というのが事実と言えます。
フレーム素材別、長持ちする・しないの「イメージ」と「現実」
私たち自転車乗りの多くは、知識や実体験として上記のような「フレーム素材による違い」を認識していますが、
これらは「半分は事実であり、半分はイメージ」だと思います。
一般的なイメージに反する事実もある
クロモリフレームの自転車は丈夫で長持ちするというイメージが強く、「一生もの」などと言われることもありますが、クラック・破断が起きた事例も多数あります。
アルミフレームの自転車は短命と言われますが、5年・10年・それ以上の長い間トラブルなく長持ちすることもあります。(とはいえ、確実に劣化はするので、運良く耐えているだけだと思います。)
カーボンフレームの自転車の耐用年数は未知数で、早くヘタることもありますが、ヘタリが原因で破断などが起きたという話は聞いたことがありません。しかし、フレーム以外のパーツやボルトにクラックや破断の事例があります。(次項に関連)
このように、一般的に持たれるイメージ・期待を裏切る事実は存在します。
フレーム以外の部品が破断することもある
自転車は「フレーム」だけで出来ているのではなく、メインのフレームを中心にたくさんのパーツが組み付けてあります。
そして、クラックや破断などの重大な故障が生じる可能性は、メインフレームだけに存在するわけではない(自転車のどこに発生するか分からない)ということを、私たちは理解し・留意しておく必要があります。
- 例えば、ステムとハンドルを固定している「ボルトが破断」することが稀にあります。(もちろん締め付けトルクを守っているのが前提です。ボルトも消耗品で、理想的には時々交換するのがベターなのでしょう。)
- 例えば、サドルを固定している「シートポストにクラック」が入ることがあります。(もちろん締め付けトルクを守っているのが前提です。クラックが発生してしまったら、いち早く気付いてパーツごと交換が必要。)
メインのフレームに問題がなくても、自転車のさまざまな部分に常に負荷がかかっていて、疲労が蓄積されているのです。
フレーム素材に関わらず、タイヤなどは早期に劣化する
ここまでの内容や、和田サイクルさんの当該記事では、自転車の「フレーム」や「金属部品」の経年劣化について述べていますが、劣化するのはフレームや金属部品だけではありません。
「タイヤ」や「タイヤチューブ」も経年劣化が早いパーツです。
何年も無交換だと、タイヤのゴムは本来の弾力を失いヒビ割れやすくなり、チューブは破れやすくなります。
例えば「物置に仕舞っていた自転車を数年ぶりに出して乗る」なんて場合には、乾燥や湿度によってタイヤもチューブも酷く劣化している可能性があります。
自転車を数年ぶりに動かすような場合は、まずタイヤ&チューブ&リムテープを全部交換したほうが安心かもしれません。さらに、ブレーキ等その他の点検も必要です。
「和田サイクル」さんの記事中で、
“たとえ全く使っていない場合でも経年劣化は進行する”という内容があったように、
フレームや部品は組付けられたその時から、常にその寿命をカウントダウンをしているんですね…。
結局、日々の点検が大事
フレームや部品の劣化は少しずつ進行し、限度を超えると破壊が起きる恐れがあります。
破断や事故などの大きな問題が発生する前に、少しでも早く異常に気付くことが肝心ですね。
そのために私たちが出来ることは何でしょうか?大まかには次の3つの方法だと思います。
1. 日頃のお手入れ時に点検もする
日頃から自転車のお手入れを自分でしていると、自転車の細かいところや、乗っているだけでは見えないところまで目視確認できます。
私は、自転車に1~3回乗るたびに、フレームやホイールをクリーナーで綺麗にしたり、チェーンの汚れを拭き取ったりしています。
経年劣化や不具合は、目で見ても解らないものもありますが、中には異常を発見できることもあります。
ということで、日頃のお手入れ=日常メンテナンスを頑張ることで、自転車の状態をいつも確認して、小さな変化にも気が付けるようになるでしょう。
いくらお手入れをしても、自転車の経年劣化を止めることはできませんが、「異常に早く気付く機会を作る」という点では、日頃のお手入れが最良の方法だと思います。
2. 異音などをチェックし、敏感になる
自転車のどこかに「ゆるみ」「ガタつき」「ヒビ」や「異常な摩耗」などのトラブルが発生すると、多くの場合、それは「異音」や「違和感」として感じ取ることができます。
例えば走行中に、いつもとは違う音や振動を感じたり、操作に対する反応が妙な感じがするというような場合、どこかに異変があるはずです。(ただタイヤの空気圧が低いとか、異物が噛んでいるだけのこともありますが)
また、和田サイクルさんの例の記事にあるように「自転車を20cm程度持ち上げて落とす」とか「ブレーキをかけた状態で車体を前後にゆする」という方法で、車体やパーツのガタつきを点検できます。
走行中に異音や違和感がなく、点検しても何も異常が見られないなら、現状は大きな問題はなさそうだと判断できます。
もし、ある日「ガタつき」や「クラック」などを見つけた時は、すぐに自転車の使用を中止する必要があるでしょう。(その後、修理が可能なら修理、できないなら自転車とお別れ…)
とにかく、異音や違和感に敏感でいることが大切だと思います。
3. 年数が経った自転車は、プロの点検整備に出す
自転車において「経年劣化」というのは確かに存在するということが解ったので、例えば5年・10年など年数が経っている自転車は、それだけで色々心配したほうが良さそうです。
私を含めて、日頃のメンテナンスやパーツ交換を自分でやっている「自転車イジリが好きな人」でも、自分では出来ないオーバーホール作業や、1人では気付けない異常などがあると思います。
そこで、頼れるのはやはりプロの手と目。
数えきれないほどの自転車を組み立て・整備している腕利きの自転車屋さんに点検整備をしてもらえば、数をこなしてきたその経験から気付く「異常・違和感」というものがあるはずです。
和田サイクルさんのような、実際のトラブルを目にしてきた自転車屋さんは、私たちとは見ている場所も違うかもしれません。
「古くなった自転車を、それでも乗り続ける」という選択をするならば、自転車屋さんの力も借りながら、こまめな点検・整備をして維持していくしかないと思います。
愛車との日々も有限、今を大切にしよう
長い間一緒に走ってきた自転車に、ある日、修復不能な問題が生じて、乗れなくなる日が来るかもしれません。(多くの人は、そうなる前に手放して、別の自転車に乗り換えます。)
経年劣化でなくとも、転倒や事故で深刻なダメージを与えてしまうこともあります。
幸運にも、長年何の問題もなく乗ってこられた自転車も、10年・20年などの節目を迎える頃には「そろそろフレームが限界かもしれない」とか「突然破断する可能性を否定できない」などの心配が現実味を帯びてきます。
モノを大事に長く使うのは素晴らしいことですが、どうやら自転車を「一生もの」にするのは難しそうです。
つまり、あなたや私が今乗っている、大好きな自転車。
その愛車と一緒に走れる日々は有限であり、貴重なものなのです。
本当に、今の愛車とお別れする日が来てしまうのか?それはいつ頃なのか?
未来のことなので、その結末は誰にもわかりません。
だから、お気に入りの自転車が健在な今のうちに、少しでもたくさんの場所へ行ったり、多くの距離を一緒に走ることが「自転車愛」と言えるのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの出現以来、自転車に乗る機会が減ってしまったという人も多いと思います。(私もそうです)
コロナ禍以前と同じようにはできないかもしれませんが、1回でも多くの「満足のいくライド」を友人や愛車と一緒に楽しみたいですね。
おしまい
こちらの記事もぜひ参考に